情報法(法情報学): 第7講
サイバー犯罪と刑法
サイバー犯罪
- ①
- ⑴意義
コンピューター技術および電気通信技術を利用(悪用)した犯罪
- ⑵具体例
- ⒜コンピューターを利用した犯罪
- 金融機関等のオンライン端末を不正操作すること
- ウェブページの改竄または消去
- インターネット上の他人のアカウントを乗っ取りその情報を書き換える等すること
- コンピューター・ウイルスその他の手段により大量のトラフィックを生じさせることでサーバーをダウンさせること
- ⒝ネットワークを利用した犯罪
- 特定の個人・団体を誹謗中傷する内容をウェブページ等に掲載すること
- 電子メールを送付することにより恐喝・強迫・強要を行うこと
- ウェブページ上で猥褻な図画を公表または配信すること
- インターネット上の掲示板等を利用して覚醒剤その他の違法薬物の取引を行うこと
- インターネット上の掲示板等を利用して違法な取引(無限連鎖講の開設・運営・加入等、賭博、富籤の発売等)を行うこと
- インターネットを経由して著作権・著作隣接権侵害となる行為を行うこと
- ⒞不正アクセス
- 不正アクセス行為および不正アクセス助長行為
- ⒜コンピューターを利用した犯罪
- ⑴意義
- ②サイバー犯罪の特徴
- 匿名性
- 痕跡を残さず消去しやすい
- 被害が不特定多数に及びやすい
- 時間と場所の制約がない(国境を越える)
サイバー犯罪条約
- ①サイバー犯罪条約(Convention on Cybercrime)
2001年11月にストラスブールで採択され、ブダペストにおいて主要48カ国が署名、2004年に発効。わが国は2004年(平成16年)に国会で批准の承認を得、その後内国法を整備して2012年に批准(平成24年条約第7号)。
- ②概要
締結国に以下を義務づけている
- ⑴内国法の整備
- コンピューター・システムに対する違法なアクセスおよびコンピューター・データに対する違法な傍受を犯罪とすること
- コンピューター・データの破損・改竄・隠蔽等およびそれらによるコンピューター・システムの妨害を犯罪とすること
- 上記を意図して作成される装置・パスワード・プログラム等の製造・販売・取得・使用・保有等を犯罪とすること
- 不正なコンピューター・データの生成・偽造等およびコンピューター・システムの妨害による詐欺等を犯罪とすること
- コンピューター・システムに関連する児童ポルノの製造・提供・保有等を犯罪とすること(全部または一部の留保可)
- コンピューター・システムによって行われる著作権・著作隣接権等の侵害を犯罪とすること
- 上記で犯罪とされる行為の幇助・教唆および未遂を犯罪とすること(全部または一部の留保可)
- 特定の捜査または刑事訴訟のための権限・手続の合理化
- コンピューター・データの保全
- コンピューター・データおよびプロバイダー情報の提出命令
- コンピューター・データの捜索・押収
- 通信記録のリアルタイム収集・通信内容の傍受
- 裁判権
- ⑵国際協力
- 一定の手続における締結国どうしの相互援助
- 犯罪人引渡し
- コンピューター・データの保全
- コンピューター・データへのアクセス
- 通信記録のリアルタイム収集・通信内容の傍受
- 一定の手続における締結国どうしの相互援助
- ⑴内国法の整備
わが国の法令
- ①刑法
- ⑴不正指令電磁的記録に関する罪
不正指令電磁的記録とは……
- 人が電子計算機を使用するに際して
- その意図に沿うべき動作をさせず,または
- その意図に反する動作をさせるべき
- 不正な指令を与える電磁的記録,または不正な指令を記述した電磁的記録等
- ⒜作成・提供(刑168条の2第1項)
- ⒝使用(&未遂罪)(刑168条の2第2項・3項)
- ⒞取得・保管(刑168条の3)
- ⑵猥褻電磁的記録頒布・送信等および有償頒布目的所持・保管(刑175条)
- ⑶電子計算機損壊等業務妨害罪(&未遂罪)(刑234条の2)
- ⑷電子計算機使用詐欺罪(&未遂罪)(刑246条の2・250条)
- ⑴不正指令電磁的記録に関する罪
- ②不正アクセス禁止法
- ⑴不正アクセス行為(不正アクセス2条4項・3条・11条)
- ⑵識別符号の不正な取得・提供・保管(不正アクセス2条2項・4条・5条・6条・12条)
- ⑶識別符号入力不正要求(不正アクセス7条・12条)
※上記⑴⑵は条約により国外犯にも適用(不正アクセス14条・刑4条の2)
- ③その他の法令における罰則規定
- ⑴知的財産に係る各権利の侵害罪
著作権侵害罪における,いわゆる「リーチサイト」「リーチプログラム」規制(著119条2項4号・5号)
- ⒜侵害著作物等利用容易化ウェブサイトの公衆への提示
- ⒝侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等
- ⑶営業秘密不正取得等に関する罪
詳細は 不正競争防止法 第3講 を参照
- ⑴知的財産に係る各権利の侵害罪