情報法(法情報学): 第1講
情報とは何か
法律では「情報」についての定義は特にない。一般の意味は例えば以下のよう。
- 広辞苑(第五版)
①あることについてのしらせ ②判断を下したり行動を起したりするために必要な,種々の媒体を介しての知識
- 大辞林(第二版)
①事物・出来事などの内容・様子。また,その知らせ。②(information)ある特定の目的について,適切な判断を下したり,行動の意志決定をするために役立つ資料や知識。③機械系や生体系に与えられる指令や信号。例えば遺伝情報など。④物質・エネルギーとともに,現代社会を構成する要素の一。
- 新明解国語辞典[第五版]
ある事柄に関して伝達(入手)されるデータ(の内容)。〔通常は,送り手・受け手にとって何らかの意味を持つ(形に並んでいる)データを指すが,データの表わす意味内容そのものを指すこともある。さらに,そのデータをもとにして適切な決定を下したり行動をとったりするという判断材料としての側面に重点を置く場合も多い。また,個別のデータが生のまま未整理の段階にとどまっているというニュアンスで用いられることもあり,知識に比べて不確実性を包含した用語〕
他方,情報学では以下のように定義される。
- 情報システムハンドブック (培風館・1989年)
ある現象に関して認識されていること,またはその一部
情報・知識の性質
- 情報・知識は,無体物(=空間の一部を占める存在ではない)なので,物理的にコントロールできない。
- 情報・知識は,多くの人に伝播して共有されることにより人類共通の財産となる。
- 逆に情報・知識の有無ないし多寡によって,経済的利益を大きく得たり失ったりすることもある。= 情報・知識が財産としての価値を有することがある。
情報に関する法律
- 情報流通と私法上の権利・利益: 情報の発信・流通が他人の権利・利益を侵害することがある。
- 民法(不法行為)
- 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法) など
- 私法上の財産としての情報: 主に「知的財産」としてこれを保護するさまざまな法令がある。
- 特許法
- 意匠法
- 商標法
- 著作権法 など
- 情報に関する行為を罰する法: 刑法その他の刑罰法令によって情報に関する一定の行為を犯罪とし,それに刑罰を科す。
- 刑法
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール送信適正化法,迷惑メール防止法) など
- 行政法上での情報: 権力機関や大資本が有する情報を規律する。また情報流通に携わる者に対する規制。
- 行政機関の保有する情報の公開に関する法律
- 個人情報保護法
- 放送法
- 電気通信事業法 など
情報に関する倫理・道徳
情報化社会に特有の倫理・道徳(moral, ethics)が考えられる。
例えば,ブログがコメントによって “炎上” するなどの集団心理,匿名ゆえの無遠慮な発言など,コミュニケーションに関わる倫理・道徳の問題が少なからず考えられる。