情報法(法情報学): 第2講
情報公開制度 Part 1
情報公開の沿革
- ①諸外国
- 1766年 スウェーデンが “報道自由法(tryckfrihetsförordning)” を制定
これによりスウェーデンは,世界で最も早く言論の自由・報道の自由を保障し,検閲を廃した憲法を導入,公文書への市民のアクセスを可能にした国になったとされる。
- 1966年 アメリカ合衆国が “情報自由法(Freedom Of Information Act : FOIA)” を制定
1996年にはこれが改正されて “電子文書情報公開法(Electronic Freedom Of Information Act Amendments of 1996 : E-FOIA)” となる
- 1766年 スウェーデンが “報道自由法(tryckfrihetsförordning)” を制定
- ②日本
- 1982年(昭和57年) 山形県金山町が情報公開条例を制定。日本初の情報公開制度を有する地方公共団体となる。
- 1983年(昭和58年) 神奈川県が情報公開条例を制定。都道府県レベルでは日本初となる。
- 1999年(平成11年) 国の情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律 =平11年法律42号)が公布,2001年より施行。
情報公開の意義等
- ①意義・趣旨(行政情報公開1条)
- ⑴行政文書開示請求権 ←国民主権の理念
- ⑵政府の説明責務(accountability)
- ②知る権利(right of know)
- 基本的人権の一つ →表現の自由(憲21条)
市民的及び政治的権利に関する国際規約(国際人権規約 (B規約))
第19条
1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3 〔略〕
- ▼最大決昭44・11・26 刑集23巻11号1490頁(博多駅取材フィルム提出命令事件)
報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものである。したがつて、思想の表明の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあることはいうまでもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない。
〔他方〕公正な刑事裁判の実現を保障するために、報道機関の取材活動によつて得られたものが、証拠として必要と認められるような場合には、取材の自由がある程度の制約を蒙ることとなつてもやむを得ないところ〔であるが,〕審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重および取材したものの証拠としての価値、ひいては、公正な刑事裁判を実現するにあたつての必要性の有無を考慮するとともに、他面において、取材したものを証拠として提出させられることによつて報道機関の取材の自由が妨げられる程度およびこれが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり、これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合においても、それによつて受ける報道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなければならない。
- ▼最大決昭44・11・26 刑集23巻11号1490頁(博多駅取材フィルム提出命令事件)
- 知る権利と情報公開制度における開示請求権との関係
- ▼東京高判平2・9・13 行裁41巻9号1433頁
公文書開示条例による情報開示請求権は、憲法21条やB規約19条に基礎を置く「知る権利」の保障に密接に関連するものではあるが、……この具体的開示請求権は憲法や国際人権規約等から直接導き出されるものではなく、また、これについて規定する法律がない以上、これは、あくまで、条例によって創設された権利である。そして、本件のような情報公開の制度を定めるに当たって、地方自治体が、個々の住民に開示を請求する権利を付与するか否か、付与するとしてその権利の内容をどのようなものにするかは、当該自治体が、その制度の趣旨を考慮しつつ自主的に決する問題であって、その当否までが直ちに違憲ないし違法の問題を生ずるものではない。
- ▼東京高判平26・7・25 平成24年(行コ)第412号等
知る権利は,憲法21条1項の規定の趣旨,目的から,その派生原理として導かれるものであり,知ることを妨げられない自由権として尊重されるべきものであるが,そのほかに,積極的に行政機関に対して情報の開示を求める請求権を行使するには,その根拠となる法令の規定が必要である。
- ▼東京高判平2・9・13 行裁41巻9号1433頁
- 基本的人権の一つ →表現の自由(憲21条)
行政文書
- ①行政機関(行政情報公開2条1項)
- ⑴内閣に置かれる機関&内閣所轄下に置かれる機関
- 内閣官房
- 国家安全保障会議(NSC)
- 知的財産戦略本部
- 人事院 など
- ⑵内閣府,宮内庁,内閣府設置法所定の機関
- 公正取引委員会
- 国家公安委員会
- 消費者庁 など
- ⑶国家行政組織法による国の行政機関
- 総務省
- 法務省
- 文部科学省
- 経済産業省
- 文化庁
- 特許庁
- 海上保安庁 など各省庁
- ⑷内閣府設置法・宮内庁法所定の機関&内閣府設置法における政令所定の特別の機関
- 内閣府等の施設等機関
- 宮内庁施設等機関
- 警察庁 など
- ⑸国家行政組織法における施設等機関&同法における政令所定の特別の機関
- 防衛大学校
- 税務大学校
- 拘置所
- 少年院
- 検察庁 など
- ⑹会計検査院
- ⑴内閣に置かれる機関&内閣所轄下に置かれる機関
- ②行政文書(行政情報公開2条2項)
- ⑴行政機関の職員が職務上作成・取得した
- ⑵文書,図画および電磁的記録
※情報それ自体ではなく情報が化体した媒体等
- ⑶当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして
※決裁・供覧などの事案処理手続の終了は要件でない
- ⑷当該行政機関が(開示請求時点において)保有しているもの
㊟除外… 不特定多数者向けに販売されるもの,特定歴史公文書等,歴史的・文化的資料等
開示請求
- ①主体: 何人も(行政機関情報公開3条)
※国籍・目的等も問わない
- ②相手方: 行政機関の長
- ③方式: 書面=開示請求書(行政機関情報公開4条)
- 開示請求者の氏名・名称
- 開示請求者の住所・居所
- 開示請求者が法人等の団体である場合は代表者の氏名
- 行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項