不正競争防止法: 第8講
限定提供データの保護
- 利活用が見込まれる価値あるデータだが,他の法制で保護されないもの(ビッグデータ)
- 創作性がない(著作権法,特許法では保護されない)
- 他者に広く提供される(営業秘密に該当しない)
→こうした情報を不正に取得・使用するのは不公正な競争行為
限定提供データの意義(2条7項)
- ①限定提供性(業として特定の者に提供する)
- 反復継続の意思をもって
- 特定の者に提供する
- ※特定されていれば,実際にデータ提供を受ける者の多寡は問わない
- ※「特定の者」の具体例
- ・会費を払えば誰でも提供を受けることができるデータについて,当該会費を払って提供を受ける者
- ・資格を有する者のみが参加できる,データを共有するコンソーシアムに参加する者
- ②電磁的方法により相当量蓄積され,および管理されている
- ⑴相当蓄積性
- ※電磁的方法により蓄積されることで価値を有するもの(具体的には個々のデータの性質による)
- ※当該データが電磁的方法により蓄積されることで生み出される付加価値,利活用の可能性,取引価格,収集・解析に当たり投じられた労力・時間・費用等が勘案される
- ※データの一部のみが提供される場合でも,上記に該当すればよい
- ⑵電磁的管理性
特定者にのみ提供するものとして管理するという保有者の意思を第三者が認識できるような態様(具体的には企業の規模・業態,データの性質等の事情による)
- ※アクセス制限(データ保有者と当該保有者から提供を受けた特定者以外の者がデータにアクセスできないようにする措置)
- ・IDとパスワードによる認証
- ・生体情報による認証
- ・暗号化されたデータの認証後の復号
- ・専用回線による伝送 など
- ※アクセス制限(データ保有者と当該保有者から提供を受けた特定者以外の者がデータにアクセスできないようにする措置)
- ⑴相当蓄積性
- ③技術上または営業上の情報
- 現に利活用され,または利活用が期待される情報
- ※違法な情報や公序良俗に反する有害情報は含まれない
- 現に利活用され,または利活用が期待される情報
- ④営業秘密の除外
- 秘密として管理されつつ他者に提供されるデータも含む。
- ※当初は秘密管理性を有するものが除外されていたが,令和5年法律51号改正により営業秘密のみを除外するよう改められた。
- ※限定提供データにおけるアクセス制限と秘密管理性との異同
- 秘密として管理されつつ他者に提供されるデータも含む。
規制される行為
- ①一次取得者
- ⑴限定提供データの不正取得(11号)
- ⑵不正取得した限定提供データの使用・開示(11号)
- ⑶保有者から示された限定提供データを図利加害目的で使用(管理任務違反での使用)・開示(14号)
- ②転得者その他の者
- ⑴不正取得につき悪意の転得(12号)
- ⑵不正取得につき悪意の転得者の使用・開示(12号)
- ⑶不正取得につき善意転得だが事後的悪意での使用・開示(13号)
- ⑷不正開示につき悪意の転得(15号)
- ⑸不正開示につき悪意の転得者の使用・開示(15号)
- ⑹不正開示につき善意転得だが事後的悪意での開示(16号)
- ※営業秘密の不正競争と異なり,転得者については悪意のみが対象となり重過失(知らないことにつき重大な過失がある場合)は含まれない。また①⑶の「使用」には図利加害目的だけでなく保有者から示された限定提供データに係る管理任務違反を要する。
適用除外
- ①取引による限定データの取得者がその権原の範囲内で開示する行為(19条1項8号イ)
- ⑴取引による取得であること
- ⑵自己の取得時に,不正取得・開示について善意であること
- ⑶取引によって取得した権原の範囲内での開示であること
- ②無償で公衆に利用可能となっている情報と同一のデータの取得・使用・開示(同号ロ)
- ⑴利用に際して条件(出所明示・実費負担)等が付されているものも含む
- ⑵実質的同一性
民事救済・刑事制裁
- 限定データに関する不正競争行為については,現時点では罰則は設けられていない。