不正競争防止法: 第6講
商品形態模倣行為(2条1項3号)
- 先行開発者の成果である商品形態が他人によって模倣(デッドコピー)されることで生じる競争上の不公正を是正する。
※背景には,複製技術の発達,商品ライフサイクルの短縮化,流通機構の発達等がある。
- ①商品の形態(4項=平成17年改正新設)
- 需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感
- 〔裁判例(※平成17年改正前のもの)〕
- ◆大阪地判平8・11・28 知裁集28巻4号720頁(断熱ドレンホース事件)
〔不競法2条1項3号〕にいう「商品の形態」とは,商品の形状,模様,色彩,光沢等外観上認識することができるものをいうと解すべきであ〔り,〕商品の機能,性能を実現するための構造……が……外観に顕れない内部構造にとどまる限りは「商品の形態」に当たらない
- ◆東京高判平14・1・31 判時1815号123頁(エアーソフトガン事件)
内部構造が外に現われず,需要者が注目することもない商品の場合には,外に現れない内部構造は法にいう商品の形態の構成要素に当たらないというべきである。しかし,内部構造が外に現われ,その内部構造に需要者が注目する商品の場合には,内部構造もまた商品の形態の構成要素に当たるものというべきである。
- ◆大阪地判平8・11・28 知裁集28巻4号720頁(断熱ドレンホース事件)
- ※形態に独創性は必要か?
- ◆大阪地判平12・6・22 平成8年(ワ)第3428号(いかなご用容器事件)
ある商品の形態が……保護を受けるのは,資金,労力を投下して創作・開発した成果である商品を他者に先駆けて市場に提供したことによるものと解されるから,ある商品の形態が,当該商品の販売開始時点において既に市場に存在した形態と独自的形態からなる場合には,二つの商品の形態が実質的に同一か否かを判断するに当たって,独自的要素の部分に重点を置いて判断すべきである。
- ◆東京高判平14・1・31 判時1815号123頁(エアーソフトガン事件)
〔不競法2条1項3号〕は,……問題となっている商品の形態について必ずしも独創的であることを保護の要件として要求しているわけではなく,同種の商品が通常有する形態をしている場合を保護の対象から除くことにしているだけである。
- ◆大阪地判平12・6・22 平成8年(ワ)第3428号(いかなご用容器事件)
- ②商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く(平成17年改正)
- 機能確保に不可欠な形態まで規制の対象とすると,商品・技術の独占になるおそれがある
- 〔裁判例(※平成17年改正前の「通常有する形態」に関するもの)〕
- ◆東京地判平11・2・25 判時1682号124頁(エアーソフトガン事件)
特定の製品について,……本体の製造者・販売者等が〔純正部品を〕修理等の目的のために別個に独立した商品として販売している場合……において,第三者が〔互換性部品〕を独立した商品として販売しているとき……には,純正部品の形態は……保護の対象とならないと解するのが相当である。けだし,純正部品は特定の製品のみを本体として使用するという性質上本体における取付部位や係合する他の部品との関係からその形状が一義的に決まるか,そうでないとしても本体に当初から取り付けられている部品と交換するという目的からその形状は右部品と同一又は極めて類似した形態となることが避けられないものであって,独立した商品としての純正部品自体にはその形態について創意工夫が働く余地がないというべきであり,他方,右事情は互換性部品についても同様に当てはまることから,両者の形態は必然的に同一又は極めて類似するものとならざるを得ないからである。
- ◆東京地判平11・2・25 判時1682号124頁(エアーソフトガン事件)
- ③模倣(デッドコピー)(5項=平成17年改正新設)
- 他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと
- 〔裁判例(※平成17年改正前のもの)〕
- ◆大阪地判平10・8・27 知財協会判例集平10(Ⅲ)2016頁(仏壇事件)
「模倣」とは,既に存在する他人の商品をまねてこれと同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいうと解され,実質的に同一か否かの判断に当たっては,先行商品と模倣と主張される商品とを並べて,それぞれの形状,模様,色彩等の形態を対比して観察し,総合的に判断すべきものである。
- ◆大阪地判平10・8・27 知財協会判例集平10(Ⅲ)2016頁(仏壇事件)
- ④規制対象行為(2条1項3号)
- 形態模倣商品の
- 譲渡
- 貸渡し
- 譲渡・貸渡しのための展示
- 輸出・輸入
- 電気通信回線を通じた提供(令和5年法律51号改正により追加)
- 形態模倣商品の
他の法律との関係
- ①意匠法
- ⑴意匠: 物品……の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合……であって,視覚を通じて美感を起こさせるもの(意匠2条1項)
※現行意匠法(令和元年改正)では,「物品」以外に「建築物」および「画像」の意匠もある。
- ⑵意匠登録要件: 工業上利用可能性・新規性・創意性(3条1項・2項),不登録事由(5条)がない
- ⑴意匠: 物品……の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合……であって,視覚を通じて美感を起こさせるもの(意匠2条1項)
- ②著作権法(応用美術)
- ⑴応用美術: 実用品に美術または美術上の技法や感覚を応用したもの
- ⑵著作物性: 思想・感情を創作的に表現(2条1項1号)
適用除外
- ①日本国内での最初の販売の日から3年経過した商品の形態を模倣した商品の譲渡等(19条1項5号イ)
※平成17年改正前は2条1項3号の中の括弧書きで処理していたが,適用除外であることを明確にするよう改正された。
- ②模倣商品を善意かつ重過失なく譲受した者の当該商品の譲渡等(同号ロ)
民事救済・刑事制裁
- 商品形態模倣行為(2条1項3号)に対する罰則もまた平成17年改正により設けられた。やはり著名表示冒用行為に対する罰則と同様,知的財産推進計画の一環として「模倣品対策」が謳われていたことに依る。
関連事例
- 東京地判平11・2・25 判時1682号124頁 エアソフトガン・カスタムパーツ事件
- 東京高判平14・1・31 判時1815号123頁 上記事件控訴審
- [1] 事実の概要
X(原告・控訴人)はエアソフトガン(本物の銃を模した玩具銃で,ガスによってプラスチックの弾を発射する。)の製造・販売・輸出入を業とする株式会社であり,Y₁~Y₅(被告・被控訴人。以下まとめて「Yら」という。)もまた,それぞれエアソフトガンおよびその部品の製造・販売(卸売・小売)を業とする者(個人営業者を含む。)である。
Xは,平成6年9月ごろから,その販売に係るエアソフトガン(以下「Xエアソフトガン」という。)に対応したカスタムパーツ(交換用部品)として各商品(以下「X商品」という。)を販売している。他方Yらもそれぞれ,X商品と交換してXエアソフトガンに組み込むことのできるカスタムパーツ商品を製造ないし販売している。
Xは,Yらによる上記カスタムパーツ製造・販売行為が不正競争防止法2条1項3号所掲の不正競争行為に該当するものとして,Yらに対しそれぞれ620万円~3000万円余の損害賠償を請求した(差止請求は第一審継続中にX商品の最初の販売日から3年を経過したことにより取り下げられた。)。これに対しYらは,X商品の形態が「同種の商品が通常有する形態」(平成17年改正前の2条1項3号参照)であるなどとして争った。
- [2] 第一審判旨
請求棄却。
Ⅰ ……法が商品形態の模倣行為を規制しているのが,先行者が商品形態開発のために投下した費用・労力を保護する趣旨のものであることに照らせば,当該商品の性質上その形態が一義的に決まるものについては,商品の形態について他の選択肢がないことから製造者の創意工夫の働く余地がなく,この点につき先行者が資金・労力を投下することが考えられないことからして,……保護の対象とならないものと解される。すなわち,商品の形態とその機能とが不可分一体となっている場合,互換性保持のため一定の形態をとることが必要な場合や,特定の商品の形態が市場で事実上の標準となっている場合など,その形態をとらない限り商品として成立し得ない場合は,形態模倣の規制対象にならないものと解すべきである。
……特定の製品について,当初から本体に組み込まれている部品と同一の形態の部品を本体の製造者・販売者等が修理等の目的のために別個に独立した商品として販売している場合(以下,右の部品を「純正部品」という。)において,第三者が純正部品と互換性を有する部品を独立した商品として販売しているとき(以下,右の部品を「互換性部品」という。)には,純正部品の形態は,……保護の対象とならないと解するのが相当である。けだし,純正部品は特定の製品のみを本体として使用するという性質上本体における取付部位や係合する他の部品との関係からその形状が一義的に決まるか,そうでないとしても本体に当初から取り付けられている部品と交換するという目的からその形状は右部品と同一又は極めて類似した形態となることが避けられないものであって,独立した商品としての純正部品自体にはその形態について創意工夫が働く余地がないというべきであり,他方,右事情は互換性部品についても同様に当てはまることから,両者の形態は必然的に同一又は極めて類似するものとならざるを得ないからである。
X商品は,Xが製造販売するX〔エアソフトガン〕のみに使用される部品である。そして,X商品の形態については,これがX〔エアソフトガン〕に当初から組み込まれている部品の形態と相違するものであることをうかがわせる証拠はなく,両者の形態は同一であるものと認められるものであって,X商品はX〔エアソフトガン〕の純正部品ということができる〔から,〕その形態は……「通常有する形態」に該当するというべきである。
- [3] 控訴審判旨
原判決変更。一部認容。
Ⅰ 〔不競法2条1項3号にいう〕「商品が通常有する形態」とは,当該商品のものとして,ありふれた形態,又は,その商品としての機能及び効用を果たすために不可避的に採用しなければならない形態を意味するものと解するのが相当であり,このような形態は,それがありふれた形態であるときは,その採用に困難を伴うことのないものであるために保護の必要性に乏しいことに加えて,そうではないときであっても,このような形態を特定の者に独占させるならば,後発の者が,同種の商品を製造販売できなくなるおそれがあり,複数の商品が市場で競合することを前提としてその競争のあり方を規制しようとする法の趣旨に反することになるので,法は,上記の意味で,同種商品が通常有する形態を,保護の対象から除外したものと解するのが相当である。……「同種の商品」として何をとらえるかに当たっては,模倣を主張する者の競争者(本件においてはYら)に対してどの範囲において商品の製造販売の自由を保障しなければならないかが,判断要素として重要なものになるというべきである。「同種の商品」としての機能及び効用を果たすために不可欠に採用しなければならない形態であることを理由に,模倣することを認め,同号の保護の対象から外すことが是認されるためには,その「同種の商品」の製造販売が,公正な競争行為として保障されるべきであるということが,その前提として認められなければならないからである。
模倣者は,Xエアソフトガンに着目し,その部品を製造するという選択をしたからこそ,……Xエアソフトガンの当該部品の特徴ある形態を不可避的に採用しなければならなくなっているのであり,模倣者によるXエアソフトガンの部品の特徴ある形態の模倣は,上記選択による必然的な結果の一つであるということができ,このような選択をする自由を,特徴ある形態の部品の保護を犠牲にしてまで,自由競争の名の下に保障することが,法の目的に適うとは考えられない〔。〕模倣者は, これを避けるためには,Xエアソフトガンの特徴ある形態の部品の製造をやめ,例えば,X以外の者のエアソフトガンの,保護に値する特徴を有さない部品の製造販売をするなり,自らの創意工夫により,Xエアソフトガンとは異なった形態の遊技銃及びその部品を考案するなどすべきであり,それは,Xエアソフトガンが同種商品が通常有する形態のものではないことからすれば,十分に可能なことというべきである。
Ⅱ 内部構造が外に現われず,需要者が注目することもない商品の場合には,外に現れない内部構造は法にいう商品の形態の構成要素に当たらないというべきである。しかし,内部構造が外に現われ,その内部構造に需要者が注目する商品の場合には,内部構造もまた商品の形態の構成要素に当たるものというべきである。……認定の事実によれば,Xエアソフトガンは,内部構造が外に現われ,むしろその内部構造にこそ需要者が注目する商品であることが認められ,そうである以上,Xエアソフトガンにおいては,外側の形状,模様,色彩のみならず,内部構造もまた商品の形態の構成要素に当たるものというべきである。
Ⅲ 確かに,商品が破損した場合には修理の必要が生じ,その場合,消費者に過大な負担を負わせないように,公正な競争秩序が要請されることは明らかである。しかし,交換部品の市場,特に,いわゆるカスタムパーツの市場について,修理のための部品と同列に考えることはできない。……エアソフトガンの愛好者の間では,その楽しみ方として,その性能,機能や外観を変えたり,改良したりすることが行われており,その需要に応えるために,本体としてのエアソフトガンに対応したカスタム用の部品(カスタムパーツ)が販売されているのである。……Xエアソフトガンのカスタムパーツがこのようなものである以上,公正な競争秩序の維持といっても,Xエアソフトガン用の部品(カスタムパーツ)を自由に製造販売することを,それが交換部品であることのゆえに,許容しなくてはならない特別の必要性を見いだすことはできない。少なくとも,修理部品とは異なる,カスタムパーツのような交換部品の市場においては,完成された商品の市場における形態模倣の規制と同様に,交換部品の模倣の規制がなされるべきものであり,交換部品であるからといって,特別に模倣規制を緩和すべき理由を見いだすことはできない。
- [1] 事実の概要
- 東京地判平30・8・30 平成28年(ワ)第35026号 ザ・リラクス・コート事件
- [1] 事実の概要
X(株式会社ザ・リラクス=原告)は,アパレル製品のデザイン・製造・販売を業とする平成22年(2010年)設立の会社であり,Y(株式会社ザラ・ジャパン=被告)は,アパレル製品の販売等を業とする会社で,世界88都市に7000店舗以上(当時)を展開するファッションブランド「ZARA」を運営するスペインのアパレルメーカーA(インディテックス=Industria de Diseño Textil, SA “INDITEX”)の完全子会社の日本法人である。
Xは,平成26年(2014年)2月頃から平成28年(2016年)7月頃にかけて,ミリタリー(軍用)パーカをベースにデザインした一連の婦人用コート(X各商品。一連の各商品のうち一種を指す場合はそれぞれを「X商品」という)を販売していたところ,Yは,平成28年2月から4月にかけて,同様の婦人用コート(Y商品)を販売し,また販売のため展示した。なお,それぞれの商品の標準小売価格(いずれも税別)は,X商品が5万3000円であるのに対し,Y商品は7398円であった。
Xは,Y商品がX各商品の形態を模倣したものであり,YによるY商品の販売等の行為が不正競争防止法2条1項3号に該当するものとして,約6900万円の損害賠償を求めてYを提訴した。他方Yは,X各商品の形態がパーカとして極めてありふれたものにすぎず,またY商品の形態と実質的同一性がないなどとし,さらにY商品はAによりデザインされたものをYが仕入れたにすぎず,Yは不競法19条1項5号ロにいう形態模倣商品を善意かつ重過失なく譲受した者であるから責任を負わないなどとして争った。
- [2] 判旨
一部認容(1041万円余の損害賠償)。
Ⅰ 不競法2条1項3号……によって保護される「商品の形態」とは,……商品の個々の構成要素を離れた商品全体の形態をい〔い,〕また,特段の資力や労力をかけることなく作り出すことができるありふれた形態は……該当しないと解すべきである。
〔認定事実から,〕X各商品の形態はありふれたものではなく,「商品の形態」(不競法2条1項3号)に該当するところ,X各商品……とY商品は,基本的な形態から具体的な細部の形態に至るまで多数の共通点が認められる一方,相違する点は需要者が通常の用法に従った使用に際してこれらの違いを直ちに認識することができるとまではいえないものであって,X各商品……とY商品の形態は実質的に同一であると認められる。
Ⅱ X商品とY商品の形態は,実質的に同一であるところ,同じミリタリーパーカに属するコートであっても,フード,襟部,袖部といった相当数の個別の部分があり,全体的形態においても各個別的形態においても,それぞれ相当数の選択肢が存在するのであるから,これらが偶然に一致することは考えがた〔く,またX各商品およびY商品の発売時期から判ずるに〕Y商品の製造者において,市場においてX商品を入手するなどの何らかの方法によって,その形態を把握することは十分に可能であったといえ〔,〕したがって,Y商品は,X商品の形態に依拠して製作されたものと認めるのが相当である。
Ⅲ⑴ 〔認定事実から,YとAとの間に完全親子関係があるとしてもそれらの法人格は異なり,両者の間の譲渡は形式的なものではなく,〕Yは,AからY商品を仕入れた者であって,他人の商品の形態を模倣した商品と認められるY商品を「譲り受けた者」〔不競法19条1項5号ロ〕に当たる。
⑵ 〔Yのような〕衣料品の販売業者は,自らが開発したものでない商品を仕入れる際には,それが模倣品であるなど他者の権利を侵害する商品でないことについて,当該商品やその取引に関係する諸事情に応じた注意を払うべき立場にあるといえる〔ところ,〕YとAとの関係は,単にYがAから商品を仕入れて販売したということにとどまるものではなく,……Aの開発する新商品はYが〔日本の消費者のニーズに沿ったより売れるデザインの商品がAにより開発されるという〕目的で行った情報提供等を契機にデザインされた可能性のあるものであったのであり,そうである以上,Yは仕入れに当たりその形態が他者の権利を侵害しないものでないかにつき,そのような関係がない場合と比べて,慎重に確認する義務を負うことが相当というべきである〔が,〕Yは,Y商品を仕入れるに当たり,Y商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことについて,AにY商品のデザイン過程を確認するなどして調査したことはない。
〔認定事実から,X各商品が百貨店や比較的著名なセレクトショップで販売されていたこと,〕X各商品が〔著名なものも含めて女性ファッション〕雑誌等で取り上げられていたこと〔,ファッション情報に特化したオンラインメディアでも取り上げられていたこと,さらにインターネット上において一般需要者がX各商品とY商品との酷似性につき「完コピ」などと評して投稿していたこと〕などから〔Yにおいて〕Y商品がX各商品と酷似していることを認識することは比較的容易であったといえ〔,〕このような状況において,Y商品を仕入れるに当たってY商品がX商品の形態を模倣した商品であることを知らなかったことにつき,Yに重大な過失がなかったと認めることはできない。
Ⅳ 〔X各商品とY商品との販売価格の差は〕相当に大きいから,X商品を購入する客層とY製品を購入する客層とでは,重なり合わない部分もあり,また,その価格差に鑑みれば,Y商品の販売がなかった場合,Y商品を購入した者のうちの一定数はX製品を購入しなかったと推認することができる〔し,〕Y商品の販売された平成28年2月当時には,X各商品のほかにも,〔同様の〕パーカの形態の一部を取り入れた競合製品が相当多数販売されていて,……,ベースとなる形態の同一性から,Y商品を購入した者の中には,Y商品の販売がなかったとしても,X各商品ではなく,より手頃な価格の製品も存在する前記競合品を購入した者がいた可能性が全くなかったとはいえない。……また,Yの展開するブランド「ZARA」〔が〕著名な人気ブランドであり,Y商品の形態に加え,Y商品が「ZARA」ブランドであることや,Yの一定の営業力に基づきY商品を購入した者が全く存在しなかったわけではないとも推認することができる〔ところ,こうした〕諸事情,特にX商品とY商品の大きな価格差を考慮すれば,Y商品の販売数量……のうち50%に相当する数量については,Yによる不正競争行為がなくとも,XがX商品を「販売することができないとする事情」〔不競法5条1項ただし書き〕があったものと認めるのが相当であ〔り,〕したがって,〔認定事実〕のY商品の譲渡数量のうち,50%に相当する〔着数〕に応じた金額を,Xの損害額から控除すべきである。
- [1] 事実の概要