法学入門: 第7講
行政法概説 Part 1
行政 ([public] administration)
- ①意義
- 立法・司法と並ぶ国家作用の一つ
- 行政権: 統治権の一つとして行政を行う権能
- 法律などにより決定された内容を実現する=執行(executive)
- 実質的意義としての行政
- ⑴控除説(消極説)
国家作用のうち,立法作用と司法(裁判)作用を控除した残余の作用を指すとする説。かつて君主が有していた包括的な国家権能のうち立法権が議会に移譲され,残った執行権のうち司法権がさらに分化された結果君主に残った権能が行政とされたという沿革にも対応する。
- ⑵積極説
法の下に法の規制を受けながら,現実に国家目的の積極的実現をめざして行われる全体として統一性をもった継続的な形成的国家活動を言うとする説。
- ⑴控除説(消極説)
- ②行政機関(行政庁)
- 行政権の行使にたずさわる,国や地方公共団体の機関
行政行為
行政(主体)による行為形式
- 行政行為
- 行政指導
- 行政機関が一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為または不作為を求める指導・勧告・助言その他の行為であって処分に該当しないもの(行手2条6号)
- 行政契約
- 行政主体が対等の立場の当事者となって,私人または他の行政主体との間に結ぶ契約(権利義務は発生するが対等な立場によるもの)
- 行政立法
- 行政機関による規範の定立。その内容・性質により法規命令(政令・省令など)と行政規則(主に内規・要綱・通達など)とに分けられる。
- 行政計画
- 一定の公の目標を設定し,その目標を達成するための手段を総合的に提示する行為。土地区画整理事業計画など。
- 事実行為
- 行政機関の法律効果を有しない活動
行政行為(行政処分)
- ①意義
行政が国民に対して働きかける行為のうち
- 合意に基づくことなく一方的に
- 具体的な場合において
- 国民の権利義務に直接的・観念的に影響を与える行為
- ②行政行為の種類
- ⑴法律行為的行政行為
行政機関の意思表示によって成立する
- ⒜命令的行為
本来国民がもっている自由を制限する
- 下命(禁止): 国民に作為義務または不作為義務を与える
- 許可: 本来ならば国民が生まれながらにして自由に行えることが法令などによって一般的に禁止されている場合、それを特定人に解除する
- 免除: 法令などによって一般的に作為義務が課されている場合にこれを解除する
- ⒝形成的行為
本来国民がもっていない権利などを与える
- 特許: 国民が生来にはもっていない権利などを与える(設権行為)
- 認可: 私人間で行われた契約などの法律行為を補充することによってその効果を完成させる
- 代理: 第三者がするべき行為を行政が代わって行う
- ⒜命令的行為
- ⑵準法律行為的行政行為
行政機関の意思ではなく法律の規定によって成立する
- 確認: ある事実や法律関係が存在するか否かを公的に判断する
- 公証: ある事実や法律関係の存在を公的に証明する行為のうち法律によってその法的な効果の発生が予定されているもの
- 通知
- 観念の通知: 人に一定の事実を知らせる
- 意思の通知: 一定の行為を要求する通知
- 受理: 人の行為を有効な行為として受け付けることによって法律により法的な効果が発生するもの
- ⑴法律行為的行政行為
- ③行政行為の効力
- 公定力
行政行為が不当行為であっても重大かつ明白な瑕疵がなければ,権限ある国家機関(行政庁または裁判所)がこれを取り消さない限り,一応有効なものとして公定される効力。
- 不可争力(形式的確定力)
行政行為が違法であるなどであっても,一定の期間内不服申立てや訴訟を行わなければ争うことができなくなる。
- 公定力