コンテンツ知的財産論: 第9講
コンテンツの活用 Part 2
さらなるコンテンツの活用
メタデータとタグ
- デジタル・データたるコンテンツを大きく特徴づけるものとして “メタデータ” と “タグ” が挙げられよう。これらはデジタル・データの整理・分類を容易にしたり,ネット上での検索の手掛かりになったりする。
- メタデータ(metadata)
データのためのデータ。データを説明するためのデータ。画像ファイル JPEG に付される Exif もこの一種。
- タグ(tag)
あるデジタル・データについて,その作成者や利用者(ユーザー)が任意に付すキーワード等。
音声(音楽)コンテンツのデータ変換
- ①なぜ音楽なのか?
とりわけ音楽コンテンツは,デジタル化の影響を強く受け,これが多様な利用・活用を可能にさせていると思われる。その理由は以下の点に求められよう。
- ⑴音楽に関しては,一般的にも多様なメディアやフォーマットへの欲求が強かった
→別の形式にして聴いたり持ち出したりする土壌があった
- ⑵音声データの圧縮技術の発達と多様化がデジタル化を促進
→高圧縮率・高音質と高普及率を目指して競うように
- ⑶音楽供給の一般的なメディアである CD の DRM(デジタル著作権等管理)が元来それほど厳しくなかった
→結果的にユーザの手による容易な変換を可能にした
- ⑴音楽に関しては,一般的にも多様なメディアやフォーマットへの欲求が強かった
- ②音声データの圧縮技術
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⑴可逆圧縮
データの欠落がない圧縮方式で,復号(解凍)すると圧縮前のデータを完全に復元できる。容量は比較的大きくなる。例として以下のような形式が挙げられる。
- Monkey's Audio (ape)
- Free Lossless Audio Codec (flac)
- The True Audio (tta)
- Apple Lossless Audio Codec (m4a)
- ⑵不可逆圧縮(非可逆圧縮)
データ欠落と引き換えに圧縮効率を高めた圧縮方式で,復元はできない。主に,人間が認識しにくい部分(高周波数等)を削るなどしてなされる。容量をかなり小さくできる(右図の例でいうと,アルバム全曲で75MB程度)。同じく,以下のような形式がある。
- MPEG-1 Audio Layer-3 (mp3)
- Advanced Audio Coding (aac, m4a)
- Adaptive Transform Acoustic Coding 3 (at3 等)
- Windows Media Audio (wma)
- Ogg Vorbis (ogg)
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音声データとメタデータ
- 音声データに関するデータは,主に以下のように組み込まれている。
- ⑴ヘッダないしはメタ・データとして,ファイル自体に情報を書き込む方法
→MP3 における “ID3 tag” のように,不可逆圧縮音声データのほとんどは,この方法による。
- ⑵CUE シート等の情報ファイルを別途用いて管理する方法
→可逆圧縮音声データに多い。またこれらのファイルをまとめて(コンテナに格納して)一つのファイルにすることもできる。
- ⑴ヘッダないしはメタ・データとして,ファイル自体に情報を書き込む方法
音声データとメタデータの活用
- ①楽曲等の情報
上記のように処理された音声データ(ファイル)を適切なアプリケーションやハードウェアで再生すると,楽曲ないし音声データ自体に関するさまざま情報が表示される。
- ②情報の発信
また,こうした情報をマークアップ言語で構造化し,それをネットワークを通じて配信することで,自分がコンピューター等でいつどんな楽曲を聴いたのかを発信することができる。
- ※情報のフォーマットとして RSS が用いられる(具体的にどのような形の情報が送信されるのかについては,下記のコード参照。)。
- ※上記情報は,専用のアプリケーションによって実際に配信され,Last.fm 等を介して他の人々がこれを閲覧できるようになる。
- ※上記のような情報の交換により,同一・類似の音楽を聴く人どうしでコミュニティの形成がなされることも期待される。
実際のコードは以下のような XML で記述され,送信される。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" ?> <!DOCTYPE plist PUBLIC "-//Apple Computer//DTD PLIST 1.0//EN" "http://www.apple.com/DTDs/PropertyList-1.0.dtd"> <plist version="1.0"> <dict> ……〔アカウント情報略〕…… <key>Reports</key> <array> <dict> <key>date_reported</key><date>2006-11-08T21:07:00Z</date> <key>params</key> <dict> <key>song_album</key><string>Halloween</string> <key>song_artist</key><string>Frank Zappa</string> <key>song_genre</key><string>?</string> <key>song_title</key><string>Ancient Armaments</string> </dict> <key>state</key><string>reported</string> <key>type</key><string>song</string> </dict> ……〔以下略〕…… </array> </dict> </plist>
音声の出力
- コンピューターやスマートフォン(高機能携帯端末)で音楽を聴くというとイヤホンやヘッドホン,あるいは小さなアクティブ・スピーカーで鳴らす音を聴くのが一般的だと思われるかもしれないが,ちゃんと大きなオーディオ・システムで鳴らすこともできる。すなわち,DAC(デジタル音声転送システム)や無線 LAN で接続されたネットワーク・プレイヤー等を用いて,デジタル信号を直接,またはこれをアナログ信号に変換してオーディオのアンプ,さらにはスピーカーに送って演奏することが可能だ。
考察しよう
- 技術的保護手段ないし技術的制限手段は,著作権その他の権利やコンテンツ提供者の信用を保護する一方で,今回取り扱ったようなユーザーの愉しみ方をも制限するものと言える。その意義について考察しよう