不正競争防止法: 第1講
営業の自由と不正競業法理
- ①営業の自由
- 職業選択の自由(憲22条1項)―営業の自由
- ⑴開業の自由
- ⑵営業継続および廃業の自由
- ⑶取引の自由 ――競争の自由
- 職業選択の自由(憲22条1項)―営業の自由
- ②不正競業法の沿革
- 中世=領主の支配権の侵害・組合の自治権の侵害に対する制裁 → 営業の自由の確立 → 不正競業禁圧の法理
- ⑴フランス
- 19世紀:資本主義の形成
- 一般的立法はなし,民法の不法行為の規定を基礎として判例によって展開
- ⑵イギリス
- 16世紀:複数の型の不法行為から判例により発展
- passing off:
- 自分のものを他人のものと見せかけてつかませる
- slander of title:
- 信用毀損
- malicious falsehood:
- 悪意 ……など
- 16世紀:複数の型の不法行為から判例により発展
- ⑶アメリカ
- イギリス法の原理を継受 → 独自の発展(独禁法理との関連)
- Sherman Antitrust Act (1980)
- Clayton Act & Federal Trade Commision Act (1914)
- Wheeler-Lee Act (1938) ※範囲を拡大・強化
- イギリス法の原理を継受 → 独自の発展(独禁法理との関連)
- ⑷ドイツ
- 19世紀後半に営業の自由が確立 … しかし民法はこれについての一般法理として認識されず
- Gesetz zur Bekämpfung des unlauteren Wettbewerbs (不正競業禁圧法,1896)
- Gesetz gegen den unlauteren Wettbewerb :UWG (不正競業法,1909) ※一般条項を追加
- 2004年改正
- 19世紀後半に営業の自由が確立 … しかし民法はこれについての一般法理として認識されず
- ⑴フランス
- 中世=領主の支配権の侵害・組合の自治権の侵害に対する制裁 → 営業の自由の確立 → 不正競業禁圧の法理
わが国の不正競争防止法
- 日露戦争後の急激な資本主義の発展&ドイツ改正法の影響
→明治44年(1911年)法案(制定に至らず)
- ヘーグ改正条約(1925年)に向けて
→大正15年(1926年)法案(制定に至らず)
- ロンドン改正条約会議(1934年)※ヘーグ改正条約批准の必要
→昭和9年(1934年)法成立〔10年施行〕
- ■旧法
- 大15年法案に近い,条約の要求を満たす程度
- 昭和13年(1938)改正: ロンドン改正に対応(生産物だけでなく営業にも及ぶことに)
- 昭和25年(1950)改正: GHQ 指令(差止請求権,刑事制裁,範囲拡大)
- 昭和28年(1953)改正: マドリッド協定対応(原産地・出所地拡大,ぶどう生産物原産地特例)
- 昭和40年(1965)改正: リスボン改正(1958)対応(商標権者代理人・代表者冒用)
- 昭和50年(1975)改正: ストックホルム改正
- 平成2年(1990)改正: 営業秘密保護(GATT ウルグアイ・ラウンドとも関連)
- 平成5年(1993)全面改正
- 大15年法案に近い,条約の要求を満たす程度
- ■現行法
- ・目的規定・定義規定の創設
- ・著名表示冒用,商品形態模倣,役務誤認惹起を追加
- ・損害賠償規定の整備
- ・予防請求権・廃棄除却請求権の明文化 など
- 平成6年(1994)改正: TRIPs 対応(商標保護に WTO 加盟国も)
- 平成8年(1996)改正: 商標法条約対応(商標保護に商標法条約加盟国も)
- 平成10年(1998)改正: 外国公務員等不正利益供与等,罰金引き上げ
- 平成11年(1999)改正: 技術的制限手段,省庁再編
- 平成13年(2001)改正: ドメイン名,外国公務員等不正利益供与等修正
- 平成15年(2003)改正: 民事救済措置強化,営業秘密侵害の刑事罰,ネットワーク化への対応
- 平成16年(2004)改正: 外国公務員等不正利益供与等の対象を国外にも拡大
- 平成17年(2005)改正: 著名表示冒用行為の罰則創設,商品形態模倣行為関連規定の明確化
- 平成18年(2006)改正: 営業秘密関係不正競争行為の罰則強化
- 平成21年(2009)改正: 営業秘密関係不正競争行為の要件変更・罰則強化
- 平成23年(2011)改正: 技術的制限手段回避行為の罰則新設
不正競争防止法は,他の知的財産各法と同様,あるいはそれら以上に頻繁に改正がなされている。これは,競争市場や社会情勢の変化に伴いさまざまな点で求められる利益保護の要請に応えようというのと同時に,特許法・著作権法といった権利付与型知的財産法では対応することの難しい利益の保護を同法が担っているという,その特徴的な性質に依るところが少なくないゆえであるとも言えよう。