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1999/02/14

試験に関する私見 2


初めて仰せつかった通年の講義の仕事も終わり,先日その学年末試験を行なった。前期はご存じのとおり論述試験にしたが,後期(学年末)は趣向を変えて ――むしろ,ロクでもない論述の答案を山ほど読まされるのにウンザリした,というのが正直なところだが―― 択一式,しかも数者択一ではなく最も単純な○×方式にした。

学年末試験は○×方式による旨を告知したのは,後期の授業が始まってまもなくだった。学生諸君の大半はテストが単純な方式になることを喜んでいたようだったが,そこは素人の浅はかさ…。論述と違って○×には中間点はない ――設問ひとつあたりの得点(今回の場合は 4点)が獲得できるか,さもなくば“ゼロ”なのだということに,当時いったい何人の学生が気づいたであろうか。ましてや自称ひねくれ者の僕が作成する問題である。読んですぐに○か×かを判断できるような単純な問題を作るはずがなかろう。

果たして,できあがって実際に出したのが下記の問題だ。興味がある方は各自で挑戦してみるのもよかろう。

民法 V (家族法) 1998年度 学年末試験問題

試験時間:60分,持込み・参照できるもの:法令集(判例付も可),指定テキスト,その他の参考書,自筆ノート,その他

問題.以下の各設問について,その内容が正しければ○を,誤りであれば×を,それぞれ解答欄に記入しなさい。

  1. 遺言においては,その内容たる事項について停止条件を付することができるが,その効力は常に遺言者の死亡の時に遡る。
  2. 判例は,婚姻意思について実質意思説をとるが,離婚意思については形式意思で足りるとしている。
  3. 民法750条は夫婦同氏の原則を定めたものであるが,もともと同じ氏を持つ鈴木太郎と鈴木花子が婚姻する場合であっても,いずれか一方を夫婦の氏と定めなければならず,他方において氏の変動が生ずる。
  4. A(被相続人)には,妻 B,ならびに B との間に設けた子 C および D があり,さらに愛人との間に認知した子 E がある。C は,A の相続開始時すでに死亡していたが,C には正妻との間に子 F があり,また他の女性に産ませて認知した子 G がある。この場合において,A の遺産が 1億 5000万円であるとき,G の相続分は 1500万円となる。
  5. 遺言において,「(特定の遺産を特定の相続人に)相続させる」とあるのは遺産分割方法の指定であって,この場合その遺産は被相続人(遺言者)の死亡と同時に当該相続人に承継される。
  6. 婚姻成立の日から 200日以内に出生した子について,その出生の日が婚姻に先行する内縁関係成立の日から 200日を経過している場合であれば,その子は民法 772条による嫡出の推定を受ける。
  7. 民法 896条但書にいう「被相続人の一身に専属したもの」とは,帰属上の一身専属権を指し,したがって譲渡禁止の特約付債権は相続によっては承継されない。
  8. 親族とは,6親等内の血族,配偶者および 3親等内の姻族をいい,ゆえに,ある男性の父と当該男性の妻の母とは親族関係にある。
  9. 特別養子制度は,戸籍において養子が最初から養親の嫡出子であったかのように記載される点に特徴がある。
  10. 相続人が存在しなくとも包括受遺者がある場合は,包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するのであるから,民法951条にいう「相続人のあることが明かでないとき」にはあたらない。
  11. 親権は,権利であると同時に義務でもある。
  12. H(被相続人)には子がなく,父母(ともに H の相続開始前に死亡)の両方を同じくする弟 I と妹 J,さらに母のみを同じくする兄 K がある。また,J は H の相続開始時すでに死亡していたが,J にはその嫡出子 L および M がある。この場合において,H の遺産が 9000万円であるとき,L の相続分は 1800万円となる。
  13. 民法 962条によれば,遺言においては行為無能力に関する規定の適用がなく,ゆえに,禁治産者であっても常に有効に遺言をなしうる。
  14. 相続回復請求権に関しては,表見相続人は取得時効を援用できないが,表見相続人から相続財産たる不動産を転得した第三者は,表見相続人の占有を自己の占有と併せて取得時効を援用することができる。
  15. N(被相続人)には,その推定相続人として子 O,P,Q,R(いずれも嫡出子)がある。このうち,Q はその婚姻の際に N から 2000万円の生前贈与を受け(相続開始時までにすべて消費),また R は 1000万円の遺贈を受けた。この場合において,N の遺産の総額が 4200万円であるとき,Q は相続によってなんら取得することはできないが,他の相続人 O,P,R に対して償還義務を負うこともない。
  16. 非嫡出子は,父に対して認知の訴えを提起することができるが,認知によらずして父との間の親子関係存在確認の訴えを提起することもできる。
  17. S(被相続人)には,妻 T,および子 U,V,W,ならびに兄弟 X,Y,Z がある。この場合において,S の相続につき子が全員そろって放棄したときは,T のみが相続人となる。
  18. 遺留分に基づく減殺請求権は,必ずしも裁判において行使しなければならないものではなく,裁判外の意思表示によっても行使しうる。
  19. 公正証書遺言は,要件が厳格に定められていることから,のちに自筆証書によってこれと抵触する遺言をなしたとしても,前の公正証書遺言が効力を有する。
  20. 実際には相続をせずにもっぱら相続税の控除を受けさせるため,名義を貸してその対価を受け取ることを目的とする養子縁組は無効である。
  21. 民法 735条によれば,直系姻族間の婚姻はその姻族関係が終了したあとでも禁じられているが,これは養親子の法定血族には適用されず,したがって,養親たる女性と,その女性の養子(養女)と離婚した男性とは婚姻をすることができる。
  22. A(被相続人,遺言者)には,夫 B,ならびに B との間の子 C および D がある。A は 3000万円の金員を遺して死亡したが,その遺産のうち 3分の2 を B に,3分の1 を D にそれぞれ与える旨の遺言をなしていた。この場合において,C は D に対し,250万円の遺留分減殺請求をなしうる。
  23. 相続開始前における相続の放棄は,相続人があらかじめ放棄する旨を家庭裁判所に申述したときに限りその効力を生ずる。
  24. 民法 779条は,非嫡出子につき母もこれを認知しうる旨規定するが,母子関係は,原則として母の認知を待たず分娩の事実により当然に発生し,母の死亡後においては,非嫡出子は,検察官を相手方として母との間の親子関係存在の確認訴訟を提起することができる。
  25. ワード・プロセッサを用いて作成された遺言は自筆証書遺言としての効力を有しないが,遺言者が遺言の全文,日付および氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載したものは,自筆の要件を満たすものとして有効である。



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