不正競争防止法: 第3講
不正競争行為に対する民事救済
- ①差止請求権(3条)
- ⑴侵害の停止または予防
- ⑵侵害の停止または予防に必要な行為
- ②損害賠償請求権(4条)
- 要件
- ⑴不正競争行為
- ⑵不正競争行為者の故意または過失
- ⑶営業上の利益の侵害
- ⑷不正競争行為と利益侵害との相当因果関係
- 手続法上の特別な規定
- ⑴損害額の推定(5条)
- ⒜侵害行為の組成物の譲渡数量に基づく額(1項)(2条1項1~16号・22号所掲の不正競争行為)
※営業秘密については技術上のものに限られる
- ⒝侵害者の利益の額(2項)(共通)
- ⒞受けるべき金銭の額に相当する額(3項)(2条1項1~9号・11号~16号・19号・22号所掲の不正競争行為)
- ⒜侵害行為の組成物の譲渡数量に基づく額(1項)(2条1項1~16号・22号所掲の不正競争行為)
- ⑵相手方における行為の具体的態様の明示義務(6条)
- ⑶損害の計算に必要な書類の提出等(7条)
- ⑷損害の計算に必要な事項についての鑑定(8条)
- ⑸裁判所による相当な損害額の認定(9条)
- ⑹秘密保持命令に関する規定(10~12条)
- ⑺インカメラ審理(公開停止)に関する規定(13条)
- ⑴損害額の推定(5条)
- 要件
- ③信用回復措置請求(14条)
- ④差止請求権等の消滅時効
- ⑴営業秘密・限定提供データの継続的使用による侵害行為に対する差止請求権(15条)
- →侵害の事実およびその行為者を知った時から3年
- →行為開始から20年=徐斥期間(※平成27年改正で延長)
- ⑵上記差止請求権消滅後の営業秘密・限定提供データの使用による損害(4条ただし書き)
- ⑴営業秘密・限定提供データの継続的使用による侵害行為に対する差止請求権(15条)
不正競争行為に対する罰則(刑事制裁)
各不正競争行為のうち罰則が設けられるのは,原則としてそれが公益に係るものである場合(例えば2条1項1号所掲の行為のように消費者をして誤認混同せしむるなど)に限られ,もっぱら私益の保護を目的とするものには罰則がない。
しかし,もともと私益保護を目的としたものについても,知的財産権侵害の抑止という観点から看過できないとか,産業界から強い要請があったなど,政策的な理由から罰則規定が設けられることがある(平成17年改正による2条1項2号所掲の行為に対する罰則の新設がその典型)。
- ①総論
- ⑴営業秘密関連の罪(下記②⑴⒞に係る部分を除く)の未遂罪(21条4項=平成27年改正新設)
- ⑵非親告罪
※秘密保持命令違反(21条2項6号)については親告罪:21条5項(平成27年改正) - ⑶適用範囲(21条6~8項)
- ⑷一般刑法その他の刑罰規定との関係(21条9項)
- ⑸没収(21条10項~12項)
- ⑹両罰規定(22条)
法人等に最高3億円,5億円または10億円の罰金
- ②各論
- ⑴10年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金または併科(21条1項=最高罰金額は平成27年改正で引上げ)
- ⒜図利加害目的で詐欺的行為または管理侵害行為により営業秘密を取得すること(1号)
- ⒝詐欺的行為または管理侵害行為により取得した営業秘密を図利加害目的で使用・開示すること(2号)
- ⒞営業秘密を保有者から示された者が,図利加害目的で,その営業秘密管理任務に背いて,以下のいずれかの方法によりその営業秘密を領得すること(3号=平成27年改正改正):
- ⓐ営業秘密記録媒体等もしくは営業秘密化体物件を横領する,
- ⓑ営業秘密記録媒体等の記載・記録について,もしくは営業秘密化体物件についてその複製を作成する,
- ⓒ消去すべき営業秘密記録媒体等の記載・記録を消去せず,かつ消去したように仮装する
- ⒟営業秘密を保有者から示された者が,その営業秘密管理任務に背いて上記ⓐⓑⓒにより領得した営業秘密を,図利加害目的で,その営業秘密管理任務に背いて使用・開示すること(4号)
- ⒠営業秘密を保有者から示されたその役員・従業員が,図利加害目的で,その営業秘密管理任務に背いて営業秘密を使用・開示すること(5号)
- ⒡営業秘密を保有者から示されたその役員・従業員であった者が,図利加害目的で,在職中の営業秘密管理任務に背いてその営業秘密の開示の申込みをし,または開示についての請託を受けて,退職後にその営業秘密を使用・開示すること(6号)
- ⒢上記⒝⒟⒠⒡所掲の罪または下記⑶の⒝の罪に当たる開示により営業秘密を取得して,その営業秘密を図利加害目的で使用・開示すること(7号)
- ⒣上記⒝⒟⒠⒡⒢所掲の罪または下記⑶の⒝の罪に当たる開示が介在したことを知って営業秘密を取得して,その営業秘密を図利加害目的で使用・開示すること(8号=平成27年改正追加)
- ⒤自己または他人の違法使用行為(上記⒝⒟⒠⒡⒢⒣所掲の罪または技術上の営業秘密について下記⑶の⒞の罪に当たる行為)により生じた物の図利加害目的での譲渡等(違法使用行為につき善意である場合を除く)(9号=平成27年改正追加)
- ⑵5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科(21条2項)
- ⒜不正目的での周知表示混同惹起行為または商品・役務内容等誤認惹起行為(1号)
- ⒝著名表示の信用・名声を利用した図利加害目的での著名表示冒用行為(2号)
- ⒞図利目的での商品形態模倣による商品の譲渡等(3号)
- ⒟図利加害目的での技術的制限手段回避装置等の提供(4号)
- ⒠商品・役務の内容等について誤認させるような虚偽の表示をすること(5号)
- ⒡秘密保持命令違反(6号)
- ⒢外国国旗等商用禁止違反,国際機関標章等商用禁止違反または外国公務員等不正利益供与等禁止違反(7号)
- ⑶10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金または併科(21条3項=平成27年改正新設)
- ⒜日本国外で使用する目的で,上記⑴の⒜⒞の罪を犯すこと(1号)
- ⒝日本国外で上記⑴の⒝⒟⒠⒡⒢⒣の罪に当たる使用をする目的が相手方にあることの情を知って,これらの罪に当たる開示をすること(2号)
- ⒞日本国内で事業を行う保有者の営業秘密について,日本国外で上記⑴の⒝⒟⒠⒡⒢⒣の罪に当たる使用をすること(3号)
- 不正競争防止法違反被告事件の裁判例
- ▼仙台地判平15・7・17 (平15年(わ)64号)
- ▼さいたま地判平14・12・4 (平14年(わ)1119号)
外国産の鶏肉を原料とする加工品に「国産鶏肉」などと表示。
- ▼神戸地判平13・12・27 (平13年(わ)224号)
その販売等に係る冷凍食肉商品に他人の周知表示を付した事例。
など
- ⑴10年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金または併科(21条1項=最高罰金額は平成27年改正で引上げ)