知的財産法(朝日大学・法学部,大阪教育大学・教育学部,奈良女子大学・理学部)
表現のもととなるアイディア,ゲームのシステム等の仕組み,ドラマのプロット(枠組み,構成),推理小説のトリックなどは,表現とは言えない(ただし,具体的な表現にまで至っている場合は著作物たりえる。)。
以上にみた対比によると、〔両論文で〕は、使用し表されている方程式に同一のものがあり、また、記述している命題に共通する部分があることは否定できないものの、〔両者〕間の表現形式において共通するところは、〔“Abstract”の冒頭部分等〕にとどまる〔もので,これ〕は、共通の命題をそのまま表したものにすぎず、特に創作性のある表現形式によったものということはできない。また、方程式の使用は著作物性を有しないから、右に対比してみた方程式の共通性は、著作権侵害とすることはできない〔。〕
絵画や音楽における技巧・技法や,作風・雰囲気なども具体的表現とは言えない。
著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法二条一項一号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。〔なおこの事件では,一話完結形式の連載漫画における表現の保護期間の起算点も争点となっており,最高裁は,そのような漫画のキャラクターを無断利用することは連載第一回作品の著作権を侵害するものだとして,本件については保護期間の満了による著作権の消滅を理由に侵害を否定した。〕
上記判決も示すように,「キャラクター」とは,漫画・アニメーション・小説などに登場する人物や動物などについて,その名称・姿態・容貌・性格・役柄その他の特徴の総体として,読者等によって一定のイメージ(印象)として感得されるもの,また,そのようなイメージを生成するものとして創作されたものを言う。
キャラクターを具体的に表す場としての漫画等などは「表現」すなわち著作物であると言えるが,キャラクターそれ自体は「イメージ」であって具体的「表現」ではないから,厳密には著作物であるとは言えない。しかし,キャラクターについては,直接ではないにしてもこれを著作権法によって保護しようという法理がほぼ確立している。