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コンテンツ知的財産論: 第7講

法情報学: 第6講

著作権の間接侵害

間接侵害・寄与侵害

著作権侵害差止請求の相手方は直接侵害者に限られる(著112条1項)

※民法の不法行為責任については間接侵害あり(民719条2項)

カラオケ法理

カラオケ歌唱の著作権侵害責任が問われた事例から創出された法理

すなわち,自ら直接侵害行為をなすのではなくとも,その直接の侵害行為につき,

を有する者は当該著作権侵害行為の主体たりうる,という法理が確立された。

情報通信サービスとカラオケ法理

著作権の間接侵害の問題点

間接侵害規定を設けるべきか

著作権に対する直接侵害行為を幇助したり,その手段や場を提供したりするなどの行為を侵害とする(みなす)規定,いわゆる間接侵害規定を著作権法に設けるべきか否か,という議論がある。実際,イギリス1988年著作権・意匠・特許法(CDPA1988)には「二次侵害(secondary infringement)」に関する規定があり,侵害複製物の取引に関与する行為と著作権を侵害する複製物の作成・実演に関与する行為とについてこれらを差止めの対象になりうるとしている(もっともこれは二次侵害とされる行為をする者の「著作権侵害の認識」が要求される)。

インターネット上のサービスに関する著作権等侵害にあっては,直接侵害者であるユーザー等に個々に責任追及するよりも当該サービス提供者を間接侵害者としてこれに責任追及できるとなれば,その相手方を把握することが容易になるなど訴訟経済の点においても合理的とされる。

他方間接侵害を明文によって責任ありとすることは,著作物ないしコンテンツを利用するさまざまなビジネス,とりわけ新しいビジネスに対して侵害責任のリスクを増大させるおそれがあり,そうしたビジネスを現に手掛け,あるいは手掛けようとする事業者を必要以上に萎縮させる危険性を孕んでいる。

ユーザーの行為規制

従来著作権(その支分権)が働くのは著作物の「利用行為」に対してであって,ユーザーの「使用行為」(または「消費行為」。いわゆる「見る」「読む」「聴く」などの行為。)には及ばなかった。しかしながらわが国の著作権法は2009年改正(平成21年法律53号)によって私的使用目的複製に係る権利を制限した30条1項の例外規定に第3号を追加し,著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音・録画を,その事実を知りながら行う場合は当該著作権等を侵害するものとした(いわゆる「ダウンロード違法化」)。あくまで「録音・録画」という利用行為を対象としているが,いわゆるエンド・ユーザーの行為を対象とするという意味では事実上の「使用行為」に対する規制といえよう。

上記改正に際しては,30条1項3号所定の行為はあくまで民事責任の対象となるにとどめられたが,その改正の2年後さらにこれを罰則の対象とする改正がなされた(著作権法119条3項。ただし加重要件あり)。権利者等はユーザーに向けて刑罰の可能性を示すことで違法なコンテンツのダウンロード等に対する抑制効果を期待しているのかもしれないが,それに乗じての “見せしめ” 的な取締りがなされるおそれもあり,ユーザーに与える影響は小さくない。

「法情報学」の講座では本講の後 コンテンツ知財論第8講 の内容を準用します。